けしごむではけせないつみのあとはなみだをゆるさない

見た目にもぼろぼろだ。
きっと心はもっとぼろぼろなのだろう。
広い家に独りきり、ぽつんと座って何を考えるんだろうか。
ここに来る前と一緒だ、と笑っていたけれど、その笑みは見ているこっちまで辛くなるようなそれで。

『でもお前、今の状況、喜んでるだろ』

奥底で声がした。

『あいつが一人になって、一番に頼るのはお前だもんなぁ』
『ずっと俺を頼ればいい、って思ってるだろ』
『あの家族が戻ってこなけりゃいいってお前は思ってる』
「違う!俺はそんなこと」
『思ってるよなぁ、だって俺はお前の影だ、お前の考えてる事なんか丸分かりなんだよ』

腹の奥がふつふつと沸いてくる。
それは怒りなのか憎しみなのか悲しみなのかよくわからない。
唯、腹の奥がふつふつ言っているだけ。
喉の奥が焼けたように苦しい。
薄らと浮かんだ水の膜で、目の前が滲んでいく。

「陽介?」

除き込んだ目の下にはクマができている。
少し黒い其処を親指でなぞれば、目を少しだけ大きくさせて、困ったように笑った。
最近寝れなくて、言葉少なに返答が返ってくる。
ごめんな、心配掛けたくなかっただけなんだけど。

違う、俺は、おまえがそんな状態になって嬉しいんだ。
俺を頼るから、俺がお前の支えになれるから。

張った膜が落ちていく。
制服にぼたぼた落ちたそれがしみ込んで、濃くなっていく。
意外に細い手首を引っ張って、腕の中に抱き込めば、びくりと震えた後、背中に腕が回った。
顔が肩に埋められた。じわりと温かく濡れていく。
こいつの涙はきっと綺麗なものでできている。
どろどろと濁った己の水がこいつの制服に染みていくのが、悲しかった。





消しゴムでは消せない罪の痕は涙を赦さない


(取扱ジャンルじゃないけど好きなんだぜ花主)

word :: ロメア * 発展途上あいうえお題