赫に塗れた主と己が
ずるずるずぶずぶと一つの場所に埋まって逝くのは予想以上に心地良い
赤くて黒い其処は二人しか居なくて
冷たくて湿っていて、とても冷たい
戦で火照った体は疲れを訴えて
すぶすぶと意識すら深い地の底の様な場所に埋まる様だ
槍を握って出来た豆が潰れて
泣きながら消毒された所が硬くなっていた
小さなあんたの手はあんなに滑らかで白くて可愛らしい紅葉の様な形だったというのに
触れたそれは酷く硬く骨ばっていて、傷だらけの日に焼けたせいで真っ黒だ
あんたが一つ傷を負ってくる度に
主を守り切れない役立たずだと自己嫌悪の嵐に陥る俺を撫でたのはこの冷たい成長途中の掌だ
昔と立場が反対だなと言って笑った其の姿は燦然と輝く太陽の様で
あの瞬間本当は俺なんかに心を傾けるべきではないと思いながら口付けた罪悪感
それと共に感じていた醜い優越感が俺の内面を蟲の様に食い荒らして居たなんて知らないだろう
あんたは俺が心の広い、まるで親の様な人間と思っているのかもしれないけれど、そんなもんじゃない
幼い頃に感情を無理やり封じ込めていた所為か、今でも己の内面は酷く子供染みて居る
内から噴き出してくる己に対しての嫌悪を抑えるために手を赤く染めた
何も考えず、唯その手を下せばいい
目の前の物を壊せばいい、茶を運ぶだけに生み出されたからくりの様に
噴き出す赫にその人を思い出し
温かい液体に塗れた己はあの気高い人と同化しているのだと思うと
どうしようもない幸福が脳内を支配する
ひたひたと歩く度俺はあんたと一つになってゆく
体中の細胞一つ一つが声を上げる、それは間違いなく幸福の
「何をして居るのだこんな処で、風邪をひくぞ」
がくがくと震動が頭を揺さぶっていて気持ちが悪い
不思議そうな顔をした主にへらりと笑いかける
「ちょっと考え事」
「ふむ、どのような事だ。明日の朝飯の献立か?」
いつの間にか日が落ちたのか、夕暮れで辺りは真赤だ
夕日を受けておれたちは真赤だ、ここは縁側だから日の光を受けるの当たり前だが
あたりはすべてあんたの色で、あんたと同化してる
俺も、庭の木も、縁側の床も、障子紙も
同化しようとするそれらにじりじりと腹を焼かれるような嫉妬心を抱きながらもそれを隠し、笑ってみせた
「あんたは二言目にはそれなんだから、まったく食い意地張りすぎでしょ」
「育ち盛りだからな、鱈腹食べねば大きくなれん!してどの様な事だ」
鳶色の瞳が此方を離さない光を宿している
この瞳だけはどうも苦手だ、何もかも見通されているようで居た堪れなくなる
旦那は俺がさっき思った事を聞いたら何というのだろう
きっと、それはなんと素晴らしいことか、とか何とか言って豪気に笑うのだろう
俺にはまだ早いがな、と付け加えて
その小さな拒絶が聞きたくなくて、俺は瞼を伏せて嗤い、こう謂うのだ
「唯の、くだらない妄想ですよ」
隣で死んだリセットマンの妄想について
word :: ロメア * 発展途上あいうえお題