もう誰にも終焉は止められないから、
ミルフィオーレのアジトにはボス以外は入れない場所がある。
彼はこっそりだれにも見つからないように姿を消し、其処へと足繁く通っている。
そこに彼にとっての何かがあることは確かなのだ。
レオナルド・リッピとしてこの場に侵入した骸はこの間その場所を突き止め、雲雀のパソコンへデータを送った。
マフィア嫌いの自分がなぜボンゴレに対してこのような行動をするのは自分にとっての営利が関係しているのだと言い聞かせながら。
「レオ君僕ちょっと遊びに行ってくるから後よろしくー」
「え?!白蘭様?!」
すたすたと執務室を出ていく白い男。
ばたんとドアが閉まって素早く壁に作られた隠し棚から鍵を取り出す。
きっとそこにはあの男の弱点があるはず。
其処をつけば、もしかしたら。
あたかも白蘭を探しているふりを装いながらその場所へと足を向ける。
物々しい雰囲気の錠に巨大な扉。
明らかにさも何かあります、な雰囲気に眉を顰めながら鍵を開け、扉を開けた。
部屋の中には巨大なベッドと白一色の調度品が置かれている。
まるで病室の様に真白なそれに狂気の片鱗を見た。
「ひさしぶりだね、むくろ」
己の後ろから聞こえた、遠い昔聴いた声。
振り返る暇もなく背後から衝撃が背中へと伝わる。
中央のベッドまで吹き飛ばされ、咳き込む。
「何故、君がここにいるんですか、ボンゴレ」
「僕が連れてきたからだヨ、レオ君。や、六道骸君?」
巨大なドアの前に立つ小さな子どもと真白な男。
並んだ2人は同じような笑みを浮かべ、此方を見ている。
手の中でもがく獲物を甚振る様な、強者の笑み。
10年前のこの子供はこの様な笑みを浮かべるような子供では無かった筈。
少なくとも自分の前では。
「みんな気付かなかっただけだよ。俺はずっとこんな性格だった」
「キミたちの眼は節穴だネェ、こんな奇麗なツナチャンに気付かないなんて」
今気付いてもダメだヨ、もうこの子は僕のモノなんだから。
子供がお気に入りのぬいぐるみを抱えて離さないかのように小さな体を抱き込める。
それにしょうがないな、と言わんばかりの苦笑を浮かべ受け入れるボンゴレ。
彼はなぜ10年後の自分を殺した男にそのような態度をとれる?
まさか何も知らない状態のボンゴレを連れてきたんじゃないのか。
「骸君ったらよっぽどツナチャンの事大事なんだネェ。僕妬けちゃうナァ」
「10年後の俺は白蘭に殺されたって俺、知ってるよ。いや、殺してもらった、の方が正しいかも」
「うん、今にも死にたそうな顔してたから、痛く無いように殺してあげたの、僕が」
「好きでもない世界に無理矢理入らされて。でも見捨てることができない位あそこに情が湧いたから逃げられないし」
「残る道は殺されるくらいしかないもんネ。全くツナチャンのチョイスには吃驚するねぇ、僕に殺されるなんて良い選択じゃない」
「でもね、俺は気付いたんだ。全部壊しちゃえばいいんだって、白蘭と俺で、全部」
そうすればマフィアなんてなくなって俺もみんなも悲しくない。
毎日死人の恨み言を聞かせられるような夢を見なくてもいいんだよ。
ほら、なんて幸せな世界なんだろ!
狂った笑みを浮かべながらゆっくり小さな手が僕の首に絡まっていく。
ゆっくりゆっくり力を込めていく手、一刻も早くこの体から逃げなくてはと脳の端では誰かが言うのだが、動けない。
「さよなら、骸。魂の平穏を」
(うっすらと見えたリングの煌きが、彼の零した涙のようだった)