世界の終わりで君が笑っているのなら




白い頬を撫でる手は酷く優しい。
真白な青年は薄らと笑みを浮かべてガラスの棺に横たわる彼に口付た。


「もうすぐ終わるよ、ツナチャン」


森の中に隠された彼の墓を掘り起こして
まるで眠っているかのように美しい彼を連れてきた。
防腐処理のおかげなのかは分からないが今にもむくりと起きて欠伸を零しそうな風で。
だが、胸の前で組まれた両手を握れば、体温は感じられなかった。
嗚呼、己が殺したのだ、この奇麗な人間を。
そう考えるだけで背がぞくぞくして口元が吊り上がっていく。


「キミは、僕のモノになってくれるよネ」
「約束、したもんネェ、ツナチャン」


『ボンゴレ狩り、出来たらお前のモノになってあげる』


秘密裏に逢っていた時、ゆるうりと眦を歪めて嗤うその人に、無意識の内に頷いていた。
髪をくしゃりと撫でるその顔は、愛しいペットが芸を覚えた時の様なもので。
この顔を、もっと無邪気な笑みにしたい。
密かに心の中で思ったのだ。


「後は、キミの亡霊を探そうとするやつらだけ」
「いつだって傍にいたくせに、キミの本性を暴けなかった、愚かな奴ら」
「彼らが存在していた証は全部消し去ってあげるからネ」
「キミが守っていたあの女はどうしよう?やっぱ消しちゃおうかな。気に食わないモン」


顔中に唇を落しながら、キミに話しかける。
あのころみたく笑ってくれるキミはいなくって。
ただ冷たい体が透明な棺に横たわっているだけなんだけど
表向き彼に敵対している者として振舞わなきゃいけなかったから
こうやってキミを束縛できるのは、悪くない。


「うん、眠ってるツナチャンはすっごく綺麗だヨ」
「だから心配しないで。ゆっくり眠っていてBIANCANEVE」
「キミを苦しめる継母は、王子様が全部殺してあげるから」


薄く桜色に色付く唇に、小さくキスをした。
なぜかな、冷たい感触に幸せを感じる。


「ボンゴレ狩り、っていったらツナチャンを一番に殺さなきゃいけなかったのが残念だったな」
「僕の横でこの世界が崩れていくのを一緒に見たかったのに」
「でも今は隣にいるし、贅沢は言わないでおく。えらいデショ、僕」


後ろから誰かが、白蘭様、と声をかけてくる。
振り向けば、仮面をし、同じような格好をした2人の女性。
眉間に皺が寄りそうになるのを抑え、いつものように笑顔を浮かべる。


「なぁに?僕忙しいんだけどな、ツナチャンとおしゃべりするのに」
「並森中学敷地内にて守護者を発見したそうです。只今入江正一氏が向かわれています」
「ソウ、やっと見つけたんだネ、待ちくたびれたヨ」


ニコ、一つ笑って
横たわる死体の頬にちゅ、と唇を落した。


「行ってくるね、ツナチャン」
「淋しいって、僕が居ない間に泣かないでネ」
「これが終われば、君と僕はずっと一緒に居られるんだから」


彼らなんて僕たちにしたら赤子の様な力しか持ち得ない。
じっくりじっくり遊んであげようかなぁ、そっちの方が楽しそう。
でもツナチャンが望んだ世界を早く実現させてあげたいし。
ね、どっちがいいかな、ツナチャンは。
くつくつ笑いながら僕は歩みを進めて、古めかしい扉を開けた。






(さぁ、世界に終わりを告げよう。彼はきっとそこで笑って僕を待っている。)