独裁者の恋の標本
ガラスケースに笑って話しかける白蘭さんを異質な目で見つめる。
死人に対してキスを落し、返事の無い語りかけを行い、時には欲情の浮かんだ目で彼の頬に触れているのだ。
彼は元来ネクロフィリア、つまりは死体性愛、というわけではない(と思う)し
大体人間に対しての興味すら薄いのだ。
うっとりとして手の甲にキスを落したり、頬を優しげに撫でる白蘭さんなんて一生見ないもんだと思っていたけれど。
貴重なものを見たような、でも見たくなかったような。
微妙な気持ちで真白な後ろ姿を正一は見つめる。
あのボンゴレ]代目の死体を手に入れることにこの人は血眼になっていた。
見る人が見れば、だけれど。
『正チャン、僕ね、ツナチャン掘り起こしてくるから』
そう言ってスコップを担いで真剣な顔した彼を止めるのに必死になった。確か1月ほど前に。
何で止めるの、正チャン僕のリングの餌食になりたいの。
さらりと崩れていきそうになるリングを収めるように必死に言い聞かせて
まるで盗られたおもちゃを取り返すような子供の言い分に頭を痛くした。
珍しく笑顔を崩して不機嫌そうな顔を前面に押し出した彼は
結局夜にアジトを抜け出して、彼の死体を掘り出してきたらしく
満面の笑顔でぐったりと(死体なんだから当たり前だけれどそれはまるで眠っているようだった)した10代目を抱えながら
今からガラスの棺桶、作らせてよ!と何とも無茶な事を言い出した。
断ればどうなるか分かっていたからか、職人たちはものすごいスピードでそれを完成させ
白蘭さんその中にアネモネを敷き詰め、死体を寝かせた。
執務室にその棺を飾りそうな勢いだったのをなんとか宥め、豪華な客室の一間で彼を保存している。
「ツナチャンに言われたことは、僕がやるからね、絶対」
「この世界を壊してあげるから」
「キミを、僕のモノにしてもいい?」
(その問いに、僕にはあの真白な死体が笑ったかのように見えた)
(アネモネの花言葉、あなたを愛します)