「今日、クリスマスだよね」 そういえば、と思って呟けば 一番近くに居た山本が吃驚したようにこっちを振り向いた。 白く輝く日本刀を片手に提げたまま。 「やべ」 「何かあったの?怪我した?」 「ツナにクリスマスプレゼント買うの忘れてた」 「やめてよ、いい年した男にそんなん」 「今年は菊次郎二号買おうと思ってたんだけどなー」 「ってかあいつの名前菊次郎なの?!」 「今日の帰り買ってこーかな」 特大のテディベアを笑顔で渡された去年。 流石にリアクションに困った。 断ろうものなら自分の刀で切腹しそうな勢いだったし。 現在、自室の椅子の上にどっしりと座ったままの 引き攣った笑顔で受け取った熊(菊次郎一号)は、すっかり俺の愚痴相手になってしまった。 「十代目!ご無事でしたか!」 「獄寺君こそ大丈夫だった?」 「なっなんというもったいないお言葉!」 「こんなとこで泣かないでよー」 おいおい泣き出した右腕(仮)の頭を撫でて はい、とハンカチを差し出せば ずびばぜんと鼻声のままそれを受け取って目尻を拭いた。 「そういえば知ってた?今日クリスマスだって」 「あ、確かにそうですね」 「お前クリスマスプレゼント買ったか?」 「当たり前だ!十代目へのプレゼントはもう2ヶ月も前から…」 「あ…うん、ありがとう」 去年の獄寺くんからのプレゼントってなんだっけ…。 あ、タイピンだ。 貰った直後に雲雀さんが踏んだかわいそうなタイピン。 あの時雲雀さんの顔すっごい笑ってたからな…悪意ありまくりだよなー…。 「今年は耐久性に優れてますから!」 「そ、そうなんだ…」 爆弾だったらどうしよう、と一抹の不安を胸に抱えながら 遠くで聞こえる 銃声 と 爆音 と 断末魔 に 耳を傾ける。 「綱吉、片付いたよ」 「雲雀さん、すいません相手してもらっちゃって」 「良いよ、丁度イイ暇つぶしになったし」 「…そうですか…」 すたすたと歩いてきた雲雀さんに頭を軽く下げて 一本だけ赤い線の引かれた頬にそっと手を伸ばす。 傷の上をなぞればくつりと雲雀さんは笑った。 「クリスマスなのに、こんなことさせちゃって…」 「綱吉が殺されるよりこんなことした方がマシだよ」 「そうですけど」 「じゃぁいいじゃん。別に僕が死んだ訳でもないんだし」 雲雀さんが真っ赤になったトンファーを振れば、 ぱたた、と血が地面に広がった。 「帰りましょう、十代目。大分遅くなってしまいましたから」 「みんな待ってると思うぜ?パーティーだっつってたからな」 「しょうがないから僕も行ってあげるよ、書類持っていくついでに」 目の前に出された手は三つ。 どれが誰で、どれを掴んでいいのか分かんなかったから とりあえず適当に二つ、両手で握れば、獄寺くんの泣きそうな声が聞こえたから 多分山本と雲雀さんの手を握ったんだろう。 「ツナ、走れ!」 「とりあえずあの駄犬は置いていくよ」 「え、ええ?!」 「待ちやがれこの野郎!十代目の手を握るなんて…破廉恥な!」 「手ぇ繋いだだけで破廉恥ってどんだけ純情なの?!」 大声でむちゃくちゃな言い合いをしながら 二人に引き摺られるように車の後部座席に押し込まれた。 車を急発進させた山本がバックミラーに写った獄寺くんを見て笑った。 隣に座っている雲雀さんもくすくす笑っているし 別に面白くも何ともなかったけど、声を出して笑った。 ポケットで鳴る不思議な音楽は 確かこの前リボーンが勝手に設定した個別着信音だ。 ボタンを押して電話に出れば、それはそれは不機嫌そうな声が聞こえた。 『遅ぇ』 「ちょっとトラブルに巻き込まれたんだって」 『どーでもいいけど食いたいもんあるか』 「…なんで」 『暇だから作ってやる』 電話の向こうで偉そうに踏ん反り返りながら言ってるんだろうなぁ。 容易にその姿が想像できて、くすくすと笑えば 聞いてんのかバカツナ、と期限の悪そうな声が聞こえた。 「聞いてるよ。んー何がいいかなぁ…」 『早く言わねぇと作らねぇぞ』 「じゃー、ベリータルト!」 『…お前も肝が座ってきたな…ミートソースもそろそろいけるんじゃねぇの』 「流石にミートソースは…」 『相変わらずダメツナだな』 「うるさいな、じゃぁケーキ、楽しみにしてるから」 真赤な血を見た後に赤いソースのタルトが食べたくなるなんて。 もしかしたら少しおかしくなったのかもしれない。 だって今日は、山本も、獄寺くんも、雲雀さんも、リボーンも みんなおかしいんだから。 俺だけ正常なんて面白くないし。 キリストの誕生日だかなんだか知らないけど 今日くらいみんなおかしくても、誰も何も言わないから。 「はやくベリータルト食べたいなー」 小さく呟けば、山本と雲雀さんがクツクツ、笑った。 |