誰も居なくなった病室に翳る夕日。
隣のベッドで寝ていたはずの獄寺くんは腹痛が治った途端、
院長(あの雲雀さん絡みでいろいろあった)が来て退院させられていた。
おかげで今この部屋には誰も居なく、しん、としている。
いくら賑やかさが楽しいからってあそこまで騒がしいのは勘弁して欲しいと心の中で少しだけ考えてしまった。






「…寝よ…」





夕日が暖かく部屋に入り込んでくるからか、うとうとと舟を漕ぐほど眠気に襲われた。
怪我をしたのに動き回った所為なのか、と思うけれどそれすらも眠気の波に攫われていく。
こんこん、とドアがノックされた気がしたけれど、それに返事をすることもできない。






「なんだ、いるじゃないか」





誰かの声が聞こえた。
この声は聞いたことがある。
確か、さっき………だめだ、其れすらも考えられない程眠い。
本当に放っておいてくれ、と思い、そのまま暖かさに身を委ねる。






「…つなよし、」





耳元で自分を呼ぶ声がする。
低くて、耳によく馴染む歌の様に優しい響き。
緩やかな微睡みの渦に一層強く引き込まれるような。
少しひんやりとした感覚がゆるりと頬に触れ
するすると肌の上を滑っていく。
擽ったく焦れったい戯れ。
其の感触を捕まえて、ぎゅぅと握り込む。
段々と自分の体温が移っていき、暖かさが共有された其れはとても心地よくて。






「ねぇ、離してくれない?」
「ん、…あった、か…い」





くつり、と笑い声が聞こえて暖かかった空間に冷たい空気が入ってくる。
ふるりと、身を震わせれば、少しだけ自分よりも熱い温度に包まれて。
大きくなった眠気の波が押し寄せて、今度こそ其の波に飲まれた。




































「おい、ツナ…起きろ、駄目ツナ」
「痛っ!!……………え」
「これはどういう事だ、ツナ」
「しっ知らないよ!」





いつものように蹴り起こされ、目を開ければ黒い布。
顔を上げれば、つい先程思いっきり殴られ、自分の怪我を増やした張本人。
しかも何故か抱き込まれたままの姿勢。
あの恐怖が蘇ってきて自然と体が緊張する。






「…ツナ、離れろ」
「いや、リボーン、これはマジで無理だって」
「うるせぇ。テメェと添い寝すんのは俺だけで十分だ」
「添い寝って…」
「へぇ、綱吉は赤ん坊と添い寝してるの?」
「いや、そういうわけ、じゃ…」





ぱちりと目を開けた雲雀さんが楽しそうに此方を見ている。
ああどうしようまた殴られる!!
ぎゅ、と目を瞑れば、ちゅ、と頬に柔らかい体温。
思わず目を開ければ、くつくつ笑う雲雀さん。






「おはよう、綱吉」
「お、おおおおおおおはようございます雲雀さん!!」
「そんなに僕の手、心地良かったの?」
「え?」





ほら、と上げられた手は間違いなく自分が握っていて。
頭の中がパニックで真っ白くなる。
だってあの雲雀さんと一緒に寝た挙句、手を繋いでるって!
何したんだよ昨日の俺!
ていうか馬鹿昨日の俺!!
少しは学習しろ昨日の俺!!!






「雲雀、いい加減にツナから離れろ」
「わお、赤ん坊嫉妬かい?男の嫉妬は醜いよ。ねぇ綱吉」
「え?!それよりもあのなんで俺こんな事になって」
「十代目ぇ!!おはようございます!!」
「ツナー見舞い来たぞー」





がらりと勢いよくドアが開いて、立ってたのは獄寺君と山本。
2人とも目を見張った後、獄寺くんはいつものように爆発物を何処からともなく出して、
山本は笑顔のまま金属バット(常備してんの?!)を刀に変化させた。
リボーンは相変わらず銃を構えたままこっちを睨んで。
雲雀さんだけはやけに楽しそうで。左手で俺を抱き込んだまま、右手でトンファーをくるくる回している。






「…果たす」
「あはは、ツナー今助けるぜー」
「雲雀、テメェは殺す」
「綱吉、この3人全員僕が噛み殺してきてあげるから大人しく待ってて」





額に落とされた唇に赤くなるどころか寒気がした。
だってあの雲雀さんがでこちゅうした事が衝撃的過ぎて。
や、コレきっと雲雀さんじゃない。きっと俺の夢…でもそれでもヤダなぁ…。
上の空だった俺を置いて一瞬で4つの影は病室から出て行ってしまった。
外からは爆発音に銃声、金属のぶつかり合う音。
思わず、一つ溜息が零れた。












………ああ、また今日もうるさくなりそうだ。











(きっとこの後来たディーノさんがツナを慰めるという美味しい役を掻っ攫っていく筈/笑)