ぴかそ、ごっこ。 (あお、あお、あお。) 真白なカンバスにべたりと塗りつけた。 ただそこにはあおあおあお。 君は美術のテストが悪かったのよ、と (唯単に俺が嫌いなだけじゃないか、とか思うんだけれども。時々。) 美術の教師から手渡されたのはカンバス。 これって意外と高いんじゃ、なんてうわの空。 君だけなんだよ、美術の補修なんて。諫めるような口調。 (その言葉の裏に潜んだ真意なんて当の昔から気付いているよ。俺だってそこまで馬鹿じゃないんだから。) 月曜日までに提出ね、と言われ、何を書いたらいいか分かんない事に気付くけれど (まぁいいや、なんて。) 目の前にいた教師はさっさと帰ってしまったし、 そろそろ帰らなければ、アッシュグレイの番犬(自称右腕)が誰か(まぁ主に俺の親友だけど)に噛み付いているかもしれない。 そういえばこの前、くろいあの人に、躾が出来ないんならペットを飼う資格はないよ、と言われてしまって思わず笑ったんだから。 よっこいしょ、親父くさい掛け声(自分でそう思った)で見た目の割りに意外と重いカンバスを肩に掛けて屋上へ向かう。 (4限が移動教室のときは教科書の上に弁当持ってくのが日課になっている。勿論俺たち3人とも) がちゃん、ぎぎい。 兎に角体重を全部かけて鉄のドアを押して。 半分くらい開いたところで、ふと軽くドアが開いた。 大丈夫ですか十代目!、なんて本当に心配そうな顔で扉の向こうから顔を覗き込ませたぎんいろ。 太陽の光できらりきらりと光っていてまぶしいその色。 少し目を細めて、うん大丈夫だよありがとうごくでらくん、と言えばそれはもう嬉しそうににこにこと笑った。 (この笑顔が見れるのはおれだけなんてなんかもったいない。) ひょい、教科書と弁当の重みが手の中から消えて ツナ重かったろー?、いつものように笑ったまま俺の荷物を小脇に抱えたくろいろ。 光を浴びている所為か、いつもよりもどちらかと言えばこげちゃいろに近い色。 ありがとやまもと。ちょっと重かったからさ。苦笑を零せばツナはちっこいからなーと能天気な声。 (21センチも違ったら俺が小さいのは当たり前だけど。) 十代目に対して何言ってんだ野球ヤロー! あははお前やっぱカルシウム足りてないんじゃねぇの。 いつからか、もう見慣れてしまったこの光景。 2人をなだめつつもフェンスに寄りかかる。 (あ、ここ屋上ダイヴしたトコだ。ちょっとなつかしい。) がたん、隣にカンバスをおろせば怪訝な視線。 十代目、なんですかそれは。 なんかね、美術の点数悪かったから、って。課題? あれ、俺ツナより点数悪かったけどそんなん聞いてないぜ? (あ、やっぱりあの先生俺の事嫌いなんだ。まぁどうでもいいけど。) 曖昧に笑って腰を下ろせば右にはぎんいろ、左にはこげちゃいろ。 カンバスをとりあえず背中とフェンスの間にしのばせて受け取った弁当箱を開ける。 相変わらず続けられる2人の会話の応酬に耳を傾けながら顔を上へ向ける。 鉄の出入り口、白いコンクリで固められた壁、カモフラージュのような壁と同じ色の梯子。 ふと、その上にくろいろが見えた。(太陽に当たってもなおまっくろな、あの人だ。きらきらしてるのはきっとトンファー。) こちらをちらりと一瞥して、ぱちりと目が合う。 にこり、毒気のない顔で微笑まれて(この人にあるまじき表情だ。俺は嫌いじゃないけれども。) なにかいっているのか、ぱくぱくと口を動かしている。 か・み・こ・ろ・し・て・あ・げ・よ・う・か・? きっとそれは俺に対してカンバスを与えた人間にないする言葉で。 少し考えた後で、2人に気付かれないように首をよこにふった。 (だってあの人は咬み殺すどころか本当に殺してしまいそうだから) 目を細めたまっくろな人はつまらなそうな顔をしてごろり、と横になってしまった。 (おかげでくろい頭しか見えなくなってしまった) そういえばそれ、なにを描くんですか。 どうやら口論もひと段落着いたらしく、新発売のパンを齧りながら指差したのはカンバス。 俺もその内出されんのかなー、課題。 少しめんどくさそうな顔をしながら空を見上げる。 実はさ、話聞いてないからなに描くとか知らないんだよねぇ。 頭をかき、ぼそぼそと告げれば、一瞬の静寂の後、爆笑が沸き起こる。 さすがです十代目!渋いッス! さっすがツナ!やっぱおまえおもしれぇわ。 何故か感涙(?)の涙を流しながら握手されたり ひーひー言いながら背中をばしんばしん(しかも手加減なしで)叩かれたり よく分からなくて首を傾げれば、そこら辺に放置してあった絵の具を渡された。 ありがとう、と言いかけて気付く。 だって右にも左にも2人は居て、更にその2人に緊張が走っている。 これはもうあの人しかいないだろうもちろんあのくろい人。 ありがとうございますひばりさん。 顔を上げてお礼を言えば、めずらしく機嫌のよさそうなその人。 綱吉も意外とやるんだね。、ただうわの空だっただけです。 がしゃがしゃいろんないろの中からまっさおなチューブを取った。 筆につけるのも面倒くさくて、背中にしいていたカンバスに擦り付ける。 びちゃり、ぐちゅ、ぐちゃ。 (この音はなんだか血が飛ぶ音に似ている気がする。最近よく聞くあの音に。) なに描いてんだよツナ。、十代目アートですね!、ワオ、君って意外と大胆だね。 カンバスの上に青をただ擦り付けて、絵の具の固まりは指でぐいと伸ばした。 まっさおに染まる、しろ。 (あお、あお、あお。あおあおあおあおあおあお) ああ今の俺の掌きっとまっさおだ。爪の間にも入ったかな。制服についたら母さんに怒られる。 頭の片隅で独り言を呟いて、ただ狂ったように。 あおあおあお。 きょうのそらみたいだね。 ひばりさんの声。 そよそよ耳のとなりを通る風が口笛のようにきこえて とにかくあおをぬりつける。 あお、あお、あお。 じゅうだいめのいろだ。 ごくでらくんの声。 青、蒼、藍。 こんなきれいな空なんだからさ、次の時間サボろうぜ。 やまもとの声。 まだ乾ききっていないあおの上に、何処からか桃色の花弁が飛んできて。 さらにはうまい具合に張り付いて。(珍しいこともあるもんだ) 気付かない内に掌までまっさおなのが見えて。 ひばりさんも、ごくでらくんも、やまもともみんなこっちをみてわらってて。 なんだかおかしくなって。だからなのか。 まっさおなてのひらをそれぞれのほっぺたにくっつけて。 (おかげで俺の手形が3人の頬っぺたについた) いつもだったら絶対怒ってトンファーを振り回してるはずのひばりさんもわらってて。 あおいてのひらをほっぺたにあてて まっさおなかおのまま、 まっさおなそらにそまりながら ただ、わらった。 ピカソごっこ / Plastic Tree |