(眠れる森)


気付いたら其処は劇場だった。
だだっ広い空間にただ一人ぼっち。
赤い座り心地のいいシートに体を埋めて白と黒の幕を見つめた。
白い空に黒い月が浮かんでる。
黒い月は苦しそうに笑っている。



ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ



サイレン。
ゆっくりと幕が開いていく。





表れたのは白い仮面を着けた、道化師。
笑顔の仮面。
此方を見つめた。



『つな』



唇が動いて。
白い仮面が、落っこちた。
かつん。



「や、ま…もと」























気付いたら赤いシートに座っていた筈の俺は薄暗い場所に立っていた。
鬱蒼と茂った木々。
目の前を影が横切っていく。
一歩一歩、前に進むたびに木の枝がざわざわ揺れて。
振り返れば、さっき来た道なんて何処にも無くて。
がむしゃらに前に進めば、地面に寝転がって寝ている、山本が見えた。


「山本…山本!」


冷たくなっている身体に吃驚しながらも揺り動かした。
瞼はそのまま開かれず、唇が少し動いた。


『"俺"を忘れないで』




「忘れる訳、無い」
「どっちも山本だから」
「どっちも、あいしてるから」



唇にひとつ、キスを落とせば瞼が開いて、黒い瞳がこっちを見た。
力強い腕に抱き寄せられて
こつん、胸に顔を埋められた。



「ツナ…ツナツナツナ」
「大丈夫、大丈夫だよ、山本」








俺にだけ見せたきれいな傷跡だって アイシテル から。











(そしてふたりはずっと 目覚めない まま)
眠れる森 / Plastic Tree