ぺたり、と冷たい床の上に座り込み 只々前で繰り広げられる光景に 目を開き、それを見つめることしか出来ない。 赤い其れが飛び散った、金の屏風。 濃厚な香りの中、小さな背が赤の中に立っている。




くるり、と振り向いたその顔も、赤に塗れて。




「ころしちゃえばいいんだ」




にこりと笑えば、銀の髪がふわりと揺れた。 睫も、瞳も月の光を反射して白銀に輝く。




「そうすれば、なにもこわいことなんてなくなるよ」




その音は頭の中にじくじくと響いて脳髄から全てを支配して。 前の赤い肉塊が自分の父親と義母と謂う事すら頭の中から抜けていく。 ただ、聞こえるのは




「おいでよ、こっちに」




白銀の狂人の声。 ごとり、手から離れ、床に落ちた刀。 そして、差し出された白いてのひら。








「あいして、あげるから」








ゆっくりと優しく微笑んだ顔。 やっぱりこいつは狂っている。 男が男に愛されて何が楽しいのか。 そう考えるとどうしようもなくなって、 背を反らしてげらげら笑った。




「…ないてるの?」




不思議そうな顔に、笑いながら首を横に振って 穢れの無い真白な掌を、強く握った。







(どうしようもなく愛してほしかったのだ、本当は。)