(狂詩曲)


でたらめな歌が聞こえた。



茶色く色褪せはげかかった畳の上で微睡みながら聞こえるのは未完成なぐちゃぐちゃした歌。
頭ン中の神経がこんがらがりそうだ。
中にぽっかり存在していた空白の部分が、そのぐちゃぐちゃしたもので埋められている感触がして
今この瞬間、俺はアイツに侵食されている、なんて思い、声を掛けた。



「ぎん、うるせぇぞ」
「こちとらテメェの所為でそこらじゅうがイテェンだよ。少し位我慢しろ」



襖などない開放感だけが溢れかえった、
それでも淀んだ部屋の中はびゅうびゅうと風が吹き込んできてとても寒い。
それに灰色の空から徐々に雨粒が落ちてきている。
とりあえず、申し訳程度に下半身にかかった布っ切れに包まって
べたりとくっ付いたまま、温度を分け合って
そして聞こえる、不安定な音の羅列。
湿った風と共に勢いよく吹き込んでくる雨粒が伸ばした手をばたばたと打ち、
熱を奪いひやりと冷やしていく。



「風邪、ひくぞ」
「ああ、オマエもな」



裸のままの足を絡めればひやりとした足に熱が奪われる。
(銀時の足はどれだけ暑くても常にひやりとしている、それは不気味なほど)
くしゃり、髪を緩く撫でられ視線だけを上へ上げれば
相変わらず何を考えているのか分からない、銀色が此方を見つめていた。
無機質な色。
あざやかなようで、かなしい色。
命を奪う色と、同じだった。



「なんで、お前はそれを歌う。そんな歌」
「さぁ」
「殺されそうになる直前に歌ってくれた歌だなんて、縁起が悪すぎんじゃネェの」
「かもね。でもさ、」



ばりり、酷い音がした。
もしかしたらどっかの屋根が持っていかれたのかもしれない。
もしくは床が抜けたか。
遠くで聞こえる声に混じって小さく、声が聞こえた。
灰色の空に溶けていきそうなくらい、小さな声。



「オマエには、わかんないかもしんないけど」



少しくたびれた顔で笑い、またあのメロディーを発した。
無機質な音で、無表情で。








(あのとき、あのヒトは。はじめておれをみてくれたから)





狂詩曲*自由な形式により、民族的または叙事的内容を表現した器楽曲。ラプソディー。