夢喰ひ


これはきっと夢だ。
夢でなきゃおかしい。
ぴちゃり、と踏みしめた大地から聞こえた水音。



「ゆ、きむら」



見覚えのある二人が、しかも一人は想い人で。
己の目の前で、ぴくりとも動かずに
真赤な池に沈んでいる、なんて。
























「政宗殿、知っていますか?」
「Ah?何がだ?」
「西国では獏、と謂う生き物が居、夢を喰う、と」
「Tough luck!西国の事は知らねぇんだよ」



カン、と煙管の中にくゆっていた煙ごと灰を落とし
隣に大人しく座っていた幸村を抱き寄せた。
恥ずかしそうに俯き、茶の髪を揺らし
ほんのりと色付いた耳を覗かせた。



「で?その獏がどうしたんだよ」
「・・・これから起こる事が全て、夢になってしまえばよいのに、と」
「・・・は?」
「政宗殿は分からなくてよいのです」



意味が分からない、と視線を投げかければ
幸村は顔を上げ、緩く微笑んだ。



「政宗殿、お願いがありまする」
「まったく、脈絡もなく・・・なんだよ」
「某が居なくなっても、決して追って来ないでくだされ」



ぽかん、と大口を開けたまま固まっていれば
悪戯が成功した子供のように、くつりと笑う。
馬鹿にされた、と思い、不意とそっぽを向けば
頬に、柔らかい感触。
困り顔の幸村が、こっちを見ていた。



「すみませぬ。鹹かったつもりは無いのですが」
「・・・ふん」
「政宗殿には成し遂げなければいけない事があるのでしょう。
 某の事など、忘れてくだされ」























「ゆ、きむら?何寝てんだよ、お前・・・風邪ひくだろ・・・?
 なんで猿飛に抱き締められてんだよ・・・早く起きろよ!」
「政宗様・・・」
「もしかしてこれ夢なのか?そうじゃなきゃお前が死ぬなんて事無いよな?」
「政宗様!お気を確かに!」
「な、んでだよ・・・幸村ぁ!」



嗚呼、なんて悪夢だ。
きっと起き上がったら褥の中。
隣には穏やかな寝顔がある。
早く、あの世界に戻りたい。
だから。
だから、はやく。







はやく、こんなくだらない夢、食べてしまえ。