ラスト・ワルツ 






きら、きら、ぎんの踵の高いサンダル。
ふわ、ふわ、ゆれる後れ毛。
ちか、ちか、つきの光で光るシャンデリア。




ひら、ひら、グラデーションの綺麗な赤いドレス。
はら、はら、ひとみから零れる涙。
じわ、じわ、スーツに滲み込んだ。





























「泣かないで」
「いや、だ。さすけいかないで」
「貴方はもう、俺の主人じゃないんですよ」
「こんな所いや。きたくなかった」



薄紫色の部屋。
天井にはシャンデリア。
月の光でぴかぴか光って
しろいしろい光を反射した。



お妃決めの舞踏会。
灰被りのお話の中のような物語。
彼女は王子様と結婚して、幸せになれるというのが相場だけれど。
目の前の人は、お妃になれるというのに、いやだ、の一点張り。



「誰でも、憧れることなんですよ。貴方は幸運なんです」
「おうひ、なんて、なりたくない」
「幸村!」



肩を掴んで怒鳴れば
びくり、と肩を震わせ、俯いてしまった。
赤のグラデーションから覗く肩が、寒そうで
真白なケープをそっと掛けた。



「駄目だよ。俺は、あんたに相応しくない」



地位も富も、名声だってなにもない。
ただのしがない執事、兼、用心棒。
そんな俺は、あんたを幸せに出来る筈、無いだろ。



「そんなこと知るか。俺は佐助が良い、さすけじゃなきゃ、いやだ」
「・・・ばかだよ、ほんとに」
「お前の教育が、わるかったのだ」




かつん、かつん、ろうかに誰かの足音。
ぎゅう、ぎゅう、ちからいっぱい抱きしめて
ぺたり、ぺたり、りんかくを掌がなぞった。




やさしく、やさしく、ほそい腰を抱いて
ゆっくり、ゆっくり、くちびるを合わせて
しゃらり、しゃらり、かみを梳いた。




「このまま、あれが降ればよいのにな」
「シャンデリア?」
「そうすれば、この瞬間、幸せな侭、死ねるのに」




きっとあれが落ちてきたら
空から降ってくる銀色の星みたいで綺麗なんだろう。




・・・ならば、落としてしまえば、いい。
今この瞬間に。
命の灯火と共に。
美しく、此処から居なくなる為に。





かつり、気紛れで大理石の床に落ちてきた、銀の星。
白い掌の上に拾い上げた星を載せ
跪いてとった右手の甲に恭しく唇を寄せた。




「我等の終焉に、ワルツを一曲、踊ってくださいますか、姫?」
「勿論、喜んで」




そっとステップを踏めば
何処からか、ゆったりとした音楽が聞こえて。
周りの世界を銀色の星が埋めて、きらきらと光っている。
優しい薄紫の世界に銀色と共に閉じ込められる、たった二人きり。










いつまでも
手をとって
最後の、綺麗な世界で
終わらない、ラストワルツを。












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にせんひっと、ありがとうございます!
此方はお持ち帰りOKです。

(※いらっしゃらないと思いますが「さも自分が書いた」というような事だけはしないで下さいませ)