からだのなかにもぐるくすぶったねつはきっときみの





暫くの間横になっていたとはいえ体力は未だに回復していない。自分の主のためにあの忌々しい奴を殺しに言ったのにそれで風邪を引いてちゃザマぁない。全く何もかもがぶち壊しだと苛苛しながら額に載せられた手拭に意識を引かれた。生温いそれはかなり前から乗せられていたようで不器用に畳んであるそれに笑みを漏らした。嗚呼、あの戦に命を捧げつつ手が人の血で穢れるのを何よりも怖がっている可愛らしい子供。体だけ大きくなって中身なんて出来たモンじゃないあの子の周りにはいつだって人だかりが出来ていて(きっと不思議な空間ができていてきっとそれが心地良いんだろう)俺はいつもそれを優しく木の上から見守っているだけの存在。




「むくわれないな、おれ」




口に出せば余計に虚しくなった気がした。どうかあの子を一度この腕の中で抱いてみたいと考えているのだが、破廉恥だとか何とか騒いできっとそんな事出来ないだろうし何よりもあの子には大好きな『御館様』が居るのだからきっと俺なんか足元にも及ばない。月とすっぽんだ。(まぁ俺も親方様は確かに凄い人だと思うけれど)




ねぇだんなどこにいるの、なんでここにいてくれないの、おれがしんじゃってもいいの?あんたがいないとさみしくてしんじゃうんだ。あんたとであうまえはこんなことなかったのに。たださとのためにはたらいてあるじをきめてしんでいけ、ときおくのかたすみでだれかがいっていた。そういえばあれはだれだったんだろう(今となっては如何でもいい事だけれど)




「さ、すけ」




そっと触れる掌が温かくてそっと瞼を開けた。泣きそうな顔をした、




「ゆき、むら」

「しぬな、さすけ。おまえがしんだらおれはさみしくてしんでしまう」




ああ、なんだ。ダンナもおんなじだったんだ。ほっぺたびしょびしょに濡らしてぐずぐず鼻を鳴らす(あいかわらずきたないなきかたをするこどもだ)大丈夫ですよダンナ俺は死にませんから。と冷たい背中を優しく摩ってやれば大声を上げて泣き出す。嗚呼、この子は本当に可愛い、それも自分に思いっきり依存してくれているなんて忍冥利に尽きるってモンだと思わず笑ったらおもいきり殴られて大声でわめいて、やっぱり泣いた。
ごめんね、ごめんね、と小さな声で謝ってわしわし頭を撫でてぎゅうぎゅう抱きしめて鼻の頭に口付けたら泣いたまま唇を重ねられた。あったかい、あまい、しょっぱい涙の味。俺のためにこんなにも泣くなんてやっぱりばかな子。寒気と頭痛が激しいけれど、朦朧とした意識の中で唇だけが鮮明な体温。思わずそれに貪りついた。おれは涙の味を全部舐め取ってやろうと思って。(だってこのひとになみだはにあわないんだ、あまりにも)




「なかないでよゆきむら。あんたになみだはにあわないんだから」

「うるさいうるさいうるさい」




すがり付いて泣く背中をもっかい抱きしめてみたら自分の熱が移ったかのように熱くて。









このまま。くっついたとこからとけてぐちゃぐちゃになりながらひとつになって、ふたりでしんぞうをいっこきょうゆうすればどっちかがいきなりいなくなるなんてことはないし、ずっとずっといっしょにそのままあたたかくてやさしいなかでねむっていられるのに、ね。