今は
笑うことしかできない。

無理矢理気を失わせて連れてきた子供は此処に来てから一度も泣かない。  
泣いて思いっきり逃げようとするんじゃないかと思っていたのだけれど何だか予想に反してとても大人しい。  
毎日閉じ込めた僕の部屋の窓から空を見て笑っているらしい。
頭が可笑しくなったのかと思ったけれどもそうでもないらしい。


「何故君は泣かないのかな、ツナヨシクン」
「泣けるわけないじゃないですか、敵地の真ん中で」
「屈辱、と思っているのかな?君は泣く事を」  
「まさか。ここで泣いたら俺だけじゃない、ボンゴレの負けを宣言しているようなものですから」  
 
 
にっこりと笑って空を見上げた。  
視線が自分の方へ向かないことに胸の奥がざわざわ騒ぎ立てる。
抗争真っ只中の敵に拉致監禁されても遠くにいる仲間を信じるその心が憎い。
どうして。  
どうして君は、僕を見ない!  
泣いて、媚びて、開放を求めればいいのに!
その小奇麗に澄ました顔を、ぐちゃぐちゃにして僕に縋ればいい!


「じゃあ僕がボンゴレを潰してあげる」
「ボンゴレは、お前らなんかに倒されないよ」
「ああ楽しみだな、ツナヨシクンがぐちゃぐちゃな顔で泣くのが!」  
「泣くのはお前だよ、ドン・ミルフィオーレ」  
「みんなの前で犯してあげようか?さぞかし君は可愛い泣き顔を僕らの前に曝してくれるんだろうね」  
「ボンゴレを甘く見るな、消えるのはお前らだという事を覚えておけ」  
 

振り返ったキミも、もちろん僕も、一瞬たりとも変わらない仮面の笑顔。
内心で僕らは互いにこめかみに銃を突き付けあう。  
先に引き金を引くのはどちらかは分からないけれど  
さっきまで空に向いていた視線が此方を貫いたことに、満足する僕が居た。





(狐と狸の化かし合いってやつなのかなこれって)  
(僕らは狼とウサギって言った方がいいのかもしれないけどネ)