私の中から
大切な物が
消えてしまった。

なぜ其処に居たのかは分からない。  
唯、子供、10年後のボンゴレ]代目を研究対象としての興味だけで拾った。  
今にも折れそうな細い体でモスカを倒すような力を何故持っている。
気まぐれで己の研究室兼開発室に放り込んでおいた。
目を覚ました時、どの様な反応をするか。
泣くのだろうか、困惑するのだろうか、絶望するのだろうか。
笑え、と言ったら、笑うのだろうか。
中々難しい注文かもしれない。  
だけれど、研究対象のはずのこの子供には、悲しみを味あわせたくない。  

そっと死んでいるように冷たい頬に触れた。
自分の手がこんなに熱いものだなんて知らなかった。
他人に温もりを与えられるほど、熱いだなんて。  
てっきり機械のように冷たいものだとばかり思っていたのだから。

 
早く起きろ、デーチモ。  
起きてウチの名前を呼べ、その口で。  
相変わらず目を閉じて眠り続ける子供に、キスをした。  
 
 


 
 
「ね、スパナ君。僕のネコ、知らない?」
「ちっちゃくって、ふわふわしてて、甘くて美味しそうな子」
「知らないかな?目を離したらどこかに行っちゃったんだよネ」



 
 
ひんやりとした部屋の中。  
突然白い男が部屋の中に入ってきた。  
嘘くさい笑みを浮かべながら白い菓子を指で弄んでいる。  
目障りな、白。
白一色のその額を打ち抜いてやろうか、銃に手をかける。
 
 
「ネェ、キイテイルノ」


ぞくりとした。
尋常ではないほどの寒気が襲ってくる。  
咎めるような視線に貫かれ、おかしくなりそうになる。

 
「返してヨ、僕のツナチャン」  
 
 
すい、と指をさされ、その方向を見ればふらふらとしながらも此方に手を伸ばす、子供。
びゃくらん、唇が描いた名前に白は笑みを深くした。


「オハヨウ、僕の可愛い猫チャン」  


腕を広げた白の中に子供が収まる。  
すい、と喉に触れた手は緩やかに、優しく何かをなぞっている。  
喉を擽っているようにも見えたが、其処には傷痕。

 
「嗚呼やっぱりキミの声が聞こえなくなっちゃったのは残念だったな」  
「デモ、これでツナチャンの声は奪った僕だけのものだよネ」


子供の頬を両手でゆるりと包み美しく微笑む白と  
真白な手の上から小さな手を重ねて微笑む子供は  
まるで絵のように美しい光景だったけれども
胸の奥で、何かが冷えていくのがわかったのだ
それが、何かはよくわからなかったけれど、これだけはわかった。  


(くるってる、みんなみんなみんなみんなみんな)