私は自分自身を恐れている。

「僕、満月の夜は可笑しくなるんだ」  
「元から十分可笑しいと思ってた」  
「それは酷いヨ綱吉」


キングサイズのベッドに真白な肢体を組み敷いた。
甘く香り立つ首筋に顔を埋めて赫い噛み痕を残す。
部屋の巨大な窓のカーテンは引かれており、白い色を曝け出している。
目の前と同じ色に、体がかっと燃え上がるように熱くなる。  
 
 
「狼男なのかも、僕」  
「どっちかって言ったら気障な吸血鬼がお似合いですよ、貴方様には」  
「男はみんな狼なんだって」
「俺も男なんだけど」
 
 
こんな甘い匂いぷんぷんさせてミルクみたいな色の肌曝して淫靡に笑うキミのどこが僕と同じ男なのかがよく分からないヨ。
淫靡に笑う、ってのはあんたも同じだよ。あんたの顔エロイもん。
うっとりとした瞳で目の下のタトゥーをなぞっているのだろう、ゆるりと擽る指がくすぐったい。
空いている手の甲にキスを落せば、に、と笑う綱吉。
なんて蟲惑的な笑みをするのだ、この子は!
指先に軽くキスを落し続ければ、耳朶に痛みが走る。
がぶり、と言わんばかりに噛み付いた綱吉の唇は少々赤く潤んでいて  
匂い立つ鉄錆にくらくらと頭が回る。  
ぺろり、真っ赤な舌で舐めとる姿に背筋がぞくぞくする。  
舌を出して小首を傾げながらもきらりと光る目が挑発して。  
後頭部に手を回して舌を絡めれば苦いような、甘いような味が口腔内にいっぱいに広がっていく。  


「ねぇ、綱吉、壊しても、イイ?」  
 
 
金色の眼球に涎を垂らしそうなほど欲情した自分が見える。  
早く、早くチョウダイ、綱吉を。  
キミは一瞬の沈黙の後、慈悲を与える聖母のように笑った。  
 

「貴方のお気に召すままに、俺の独裁者」
 
 
ぶちり。  
テレビの電源が切れるような音がした。  


 
(僕にはもう恐れるものなどない。満たされない満月の夜が無くなるのならば。)